
暮らす人
美しい六甲山系の山並みに抱かれ、古くから生活・暮らしのメインストリートとして、また文教都市として栄えた王子公園地域。多くの人々の記憶に「どこか懐かしい」原風景を残してきた同地域ですが、その景色が今、大きな変化の真っ只中にあります。
若い人の移住や新たな飲食店、事業者の誕生など、街の随所に現れてきている変化の兆し。
そして、王子公園の再整備計画。
明るい未来を描くために、街を思う人々の声をお届けします。
暮らしと文化を長年支えてきた、文教都市の中核を担う王子公園。併用後70年を超え、全体的に老朽化が進んでおり、文教エリアのポテンシャルをいかした再整備が検討されています。
しかし、街の人の声を反映せずに進んでしまえば、誰も望んでいない、ただ綺麗で便利な王子公園ができてしまう。原風景をつくるのは、利便性ではなく愛着、ひいては一人ひとりの主体性です。各人の関わり方、在り方によって、どんな色にでもなれる。それが街の、そして公園の魅力である「懐の深さ」です。
強く、綺麗な目的のもと、関与できる「余白」を欠いて進めば、主体性や愛着は生まれません。街と、人と、公園との未来のより良い関係づくりが望まれています。
街や公園の魅力は、その“懐の深さ”“余白”にあります。
神戸は開港以来、多様な文化を取り込み、アレンジし、解け合いながら発展してきた生活文化拡充の街です。根付いた文化であるジャズ、コーヒー、洋菓子、ゴルフなどは、正直どれも生活において無くたって生きていけるものばかり。しかし、神戸の人たちは、これらが自分たちの豊かさにつながることを知っていました。街や公園と同様、彼らにはそうした文化を許容する“余白”や“懐の深さ”があったのです。
急激に変化する時代にあって、過渡期を迎えている今。少しずつ新芽が芽吹いているわたしたちの街では、神戸の豊かさを育んできた”余白”や”懐の深さ”が再び問われています。
原風景をただ「守る」のではなく、新たな世代とともに「育む」ために。
本稿では、街を思う人々の声から王子公園地域の未来絵図を描きます。